Projects

版築の材料強度に及ぼす因子の解明

その土地土地で採れる土を突き固めることによって構造物を構築する工法である版築は,古来より世界中で使用されてきた伝統的な建築技法である.持続可能性の要請が高まる昨今,版築は再び注目を集めている.この版築の材料強度に及ぼす因子について,調合および施工方法の観点から研究をおこなっている.

蔵造建築物の振動特性調査

明治期に建設された川越市に現存する蔵造建築物の振動特性を明らかにするために調査をおこなっている.過去(20年前)に東洋大学で計測したデータとの比較から経年変化による影響を明らかにする.

各改修工程における御堂の振動特性調査

御堂の各改修工程における常時微動測定をおこなうことで,御堂を構成する各要素が固有振動数や固有振動モードといった振動特性に与える影響について研究をおこなっている.

古材で構成された斗栱の構造特性評価

江戸後期に建設された御堂の解体現場から採取した斗栱を用いた加力試験をおこない,古材により構成された斗栱の構造性能を明らかにすることを目的とした研究をおこなっている.

伝統木造建築物における軒反りの研究

伝統木造建築物の軒反りは,瓦の重みや,経年によって変化する.それらを考慮して経験的に堂宮大工が軒反り曲線を決定しているという伝統技術がある.その軒反りに着目して,瓦の重みや経年変化によって軒反りがどのように変化するかを定量的に把握することを目的とした現場での測定を実施している.

歴史的煉瓦造建築物の構造性能評価

歴史的煉瓦造建築物の構造性能を明らかにするために,実在する歴史的煉瓦造建築物を対象とした構造調査,常時微動測定,採取した試験体の加力試験,煉瓦のX線CTを用いた観察,目地の成分分析等をおこなっている.併せて,煉瓦造建築物の数値解析シミュレーション方法についても検討している.

御柱祭木遣り台プロジェクト

貫構法による仮設構造物の構造性能を明らかにすることを目的に,さわらの丸太柱,ひのきの貫の仕口の加力試験をおこない,めり込み性状,荷重変形関係を明らかにした.また,内部継手に一般的に社寺建築等で採用されることの多い略鎌継ぎを採用した試験体を構築し,比較をおこなった.実験結果を反映して構築された貫構法による仮設構造物を対象に加力実験・振動実験をおこない,構造性能の検証をおこなった.

※この研究成果は,鹿島出版会SDレビュー2022入選・SD賞受賞作品の「乙事の木遣り台」に適用された.

バイオミメティクスによる土塗壁の再評価

日本の伝統土塗り壁は,左官職人が口伝や修行という暗黙知という形で受け継いできたものである.もし,その土塗り壁よりも優れた土塗り壁を構築できれば,土塗り壁の補修をするだけで伝統木造建築物の耐震性能が向上する,つまり意匠性を損なわない耐震補強方法を提案することができる.そこで,長い年月をかけて淘汰されてきた生物の生み出す構造である「ツバメの巣」に着目し,その構造・材料を明らかにすることで,新たな土塗り壁を提案するための研究をおこなっている.

炭素繊維複合材による耐震補強方法開発

炭素繊維複合材料の持つ高強度・軽量・結露しにくいという特徴は伝統木造建築物の耐震補強に有用であるが,従来の炭素繊維複合材料部材は脆性破壊をするという課題があったため,靭性能を付与する必要があった.そこで,炭素繊維複合材料部材の端部定着構造に靭性能を付与する開発をおこなった.本研究は,開発した靭性能を有する端部定着構造を適した炭素繊維複合材料部材による木造耐震補強壁について,施工実験・構造実験をおこない,炭素繊維複合材料の有用性を明らかにすることを目的としている.

レッドシダー小屋設計プロジェクト

東洋大学理工学部建築学科・伊藤研究室が設計する小屋に用いられる予定のレッドシダーの曲げ強度および剛性を評価するために載荷試験を実施した.試験体の作製は伊藤研究室と合同で実施し,単材から合成部材まで試験を行い,設計に必要な材料特性値を評価した.

木部材の非破壊ヤング係数評価方法の開発

木部材単体では,打音測定で木材全体のヤング係数を評価できることが知られているが,実際の建築物の柱では壁の取り付き等によって部材の拘束度が変化し,木部材の周波数特性が変化する.そこで,壁の取り付きによって柱の周波数特性がどのように変化するかを確認するため,実大実験や解析シミュレーションによってデータを構築することで,非破壊調査方法の開発をおこなっている.

中規模近代和風木造建築物の構造調査

都内に現存する築年数が約60年の木造建築物の構造調査をおこなった.当該木造建築物は,約8.5mの無柱空間を成立するために,洋風トラス小屋・トラス梁を用いながらも,和風の深い軒反りを達成するために,桔木を組み合わせている.洋風トラスは西欧工学導入時に,伝来した技術であるが,西欧の建築物には,和風建築のような深い軒反りは無いため,洋風トラスを桔木と組み合わせ,日本化することで,大スパンと軒反りを実現した当時の大工の知恵が伺える.